00表紙

SCROLL MANGA · 3–4 MIN

雨の名前

終点まで、あと一駅。

ORIGINAL ONE-SHOT · 2026

00:12

最終電車

零時十二分。

帰る人を、雨だけが
追いかけていた。

雨の夜、ほぼ無人の最終電車。凪の向かいで、スケッチブックを抱えた青年が眠っている。
まもなく、終点。

……あの人。

起こさなくて、
いいのかな。

あと 1 駅

小さな合図

凪がためらいながら青年の肩へ手を伸ばす。

青年は、夢の続きを見るように目を開けた。

終点ですよ。

雨は?

……かなり。

青年が、さまざまな雨の線で埋め尽くされたスケッチブックを凪に見せる。
SKETCH 47

雨を描く人

忘れもの雨うそつき雨ただいま雨

雨は、名前をもらうまで、

同じ場所に降りつづけるんだ。

誰が、つけるの。

最後に気づいた人。

今夜は、あなた。

雨に名前をつける

トンネルの暗い窓に映る凪。手元のスマートフォンには、送れなかった短い言葉が残っている。
母さんへ

帰ってきて。

未送信

「帰ってきてほしい雨」

終点

扉の向こうの雨へ、青年がスケッチブックを残して歩いていく。

いい名前だ。

待って。傘は?

ぼくが、降ってるから。

雨が、止んだ。

雨のあと

雨の止んだ終点。空いた座席にスケッチブックが残り、凪は最後のページを見つめている。
最後の雨

雨がやんだあとの名前。

今、駅に着いた。
傘、二本あるよ。

顔を上げると、

ホームには、もう雨の音がなかった。